北坂養鶏場

はたらく人はたらく人

会社員から、養鶏家へ。

育雛担当:片岡めぐみさん 2022年1月

北坂養鶏場は、ここではたらく様々な人たちの手を介して生産物をお届けしています。鶏たちの住まう環境を見守る人、直売所でお客さまにたまごを販売する人、鶏糞を生かした肥料をつくる人。多様な人々とその仕事が、ひとつまたひとつと混じりあうことで北坂養鶏場が成り立っています。「はたらく人」では、そんな北坂養鶏場の人々の話に耳を傾け、はたらきぶりや暮らしぶりを探っていきます。第一回目はひよこの育雛(いくすう)にたずさわって3年目の片岡さんにお話を伺いました。

育雛という仕事

-「育雛」は聞き慣れない言葉ですね。片岡さんの担当する、育雛のお仕事についてお伺いできますか? 育雛は、大人の鶏になるまで、ひよこや雛たちの世話する仕事です。鶏たちは、ひよこ、中雛(ちゅうびな)、大雛(おおびな)を経て成鶏(せいけい)と呼ばれる大人の鶏になります。北坂養鶏場には、ひよこと中雛と大雛が、それぞれ2万6千羽ずついて、それぞれの成長段階によって鶏舎が別れています。年中、ひよこたちがいるわけではありませんが、育成中は鶏舎の点検や、餌やりや掃除など、健やかな成鶏に育つようサポートするが私の仕事です。

-片岡さんは北坂養鶏場に入社されてからずっと育雛にたずさわっていらっしゃるのですか? 私は2019年の4月に入社しました。最初の3ヶ月間は研修を受けて、それから3年間、育雛を担当させていただいています。

-北坂養鶏場ではたらくまでは、養鶏の仕事はご存知でしたか? ここではたらくまでは、神戸に住みながら飲食業や保険代理店などではたらいてきました。養鶏という言葉は耳にしたことはありましたが、実際の仕事を知ったのは入社してからです。

会社員から、養鶏家へ

-どうやって北坂養鶏場に出会われたのでしょうか。 前職を退職したときに、生産物と日々向き合う「第一次産業」が自分には向いているかもしれないと考えるようになりました。黙々と何かに向き合い、積み重ねていくような仕事ができないかな……と。

-第一次産業もいろんな仕事がありますが、「養鶏」を真っ先に思いつかれたのですか? 幼い頃から鳥を飼っていて、動物が好きでした。鳥と一緒にいられる仕事がいいなと養鶏場が思い浮かんだんです。もともと、北坂養鶏場の存在は知っていたのでサイトの求人を見て応募しました。

-片岡さんと同じタイミングで何人か入社されたと伺いました。 私の他には同期が5人いて、動物の専門学校を卒業して新卒で入社したメンバーです。最初の3ヶ月はそれぞれに研修を受けて、北坂養鶏場のいろんな現場を経験しました。私の場合は、直売所の横にある平飼い小屋の鶏の世話や、成鶏の鶏舎の掃除など。入社してはじめて、ひよこや大雛を目にしました。生きた鶏たちと深く関わる仕事なので、生死に立ちあうこともあったり、難しいことにも直面しましたが、やっぱり鶏はかわいいなって。

-研修後に「育雛」担当を希望されたのですか? そうですね、「ひよこの世話をしてみたい」と考えるようになって「育雛」希望しました。私以外の同期も、それぞれの特性ややってみたい仕事をさせてもらっているなと感じています。

数万羽を育てながら一羽一羽と

-何万羽といる鶏たちを育てる中で、片岡さんが大切にされていることはありますか? どんな仕事も「丁寧に」ということを心がけています。私たちが育てているひよこは、約60の部屋にわけて飼育していて、一部屋ごとに4つの給水装置が配置されています。ひよこだけで200個~300個の給水装置があるので、じっくり慌てず集中して見回らないといけません。ひよこたちが、日々動き回る中に設置されているので注意深く見ていないと、水が出る部分がすっぽり抜けて水が大量に漏れていた……、なんてこともあるんです。

-それが中雛、大雛とあるわけですもんね。見回る数も相当ですね。 私たちが向き合っているのは生き物です。たくさんあるからといって見逃せません。一つひとつに気配りが必要で、丁寧に集中して仕事をしないといけないと思っています。一度、点検漏れがあって1週間も水が止まったままになっていたことがありました。気づいたときにはすっかり鶏たちが弱ってしまったんです。すぐに対応してなんとかなりましたが、自分の担当だけではなく、注意深く全体をよく見渡すようになりました。

-トラブルが起きたときや、困ったときはどうやって解決していますか? 原因をよくみて対処しないと、結局また同じ問題が起きてしまうなんてこともあります。なので落ち着いてよくみて、しっかり原因を突き止めるようになりました。とはいえ、これまで工具を使った修理などの経験がないので、どうやって修繕すればいいのか困ることもあります。そんなとき、同期が専門学校で経験したことを教えてくれて「何でも聞いてくださいね」と声をかけてくれたりもします。私より7つも年下なんですが、頼もしいなと感じています。

新しい出会いと、発見の日々

-これまで経験した仕事で、特に印象的な出来事はありますか? 普段はひよこや鶏たちと向き合う日々ですが、社長と一緒に島の外のイベント出店におもむくことがあります。神戸のファーマーズマーケットや、阪急百貨店の催事など、たくさんのお客さんに出会うことができました。「ここのたまごおいしいよね!」って常連さんが声をかけてくださったり、以前購入してくださったたまごケースを持ってきてくださって「これに入れてください」と買ってくださる方もいます。私たちが育てている鶏や、たまごを、すごく大切に想ってくださることが伝わってくるうれしい出来事でした。

-普段の仕事では感じられない経験ですね。 まったく違いますね。お客さまもやさしい方が多くて、「会いに来てるの!」なんて声をかけてくださって。他の養鶏場ではなかなかできない経験なのかなと感じています。

-養鶏場ではたらくようになって驚いたことはありますか? はたらくまでは、たまごはスーパーでしか見かけない存在でした。でも養鶏場では、とっても小さなたまごや、表面がポコポコしたもの、形がまんまるなものまで、いろんなかたちのたまごを目にしました。そういう姿をみると、均一な製品ではなく、本来は動物が生んだ多様な形があるものなんだなと驚きました。あとは、鶏が意外と暴れん坊なこともびっくりしました。私たちが近づくとすごくバタバタ落ち着かない様子になったり、せわしなく鳴きだしたりして。飼っていた文鳥はとっても大人しかったので「鳥によって性格が違うんだ」なんて発見もありました。

- 最後に、片岡さんが北坂養鶏場を一言で表すならどんな場所ですか? 自由な場所です。先輩たちの距離感も近くて話しやすいですし、仕事も任せてもらえる部分も多くて、自分らしさを認めてくださいます。「困ったことはないか?」って先輩や上司たちから話しかけてくださいます。生き物の命を預かる仕事なので、亡くなる鶏やひよこたちを目にすることで悲しくなることもあります。ですが、その分いろんな発見があって、鶏に密接に関わる現場で経験を積むことができてよかったなって日々感じています。

片岡めぐみ 2019年度入社 育雛担当

片岡さんのとある一日

5:00
起床 お弁当づくりと家事
8:00
出社 鶏舎の水や餌の点検 修繕
12:00
お昼ごはん
13:00
ひよこたちの部屋の掃除
17:00
退社 夕食の買い出し
18:00
夕食と家事
22:00
就寝

 片岡さんを知るQ&A 

座右の銘:急がば回れ
なくてはならない仕事道具:たまごをかきだす棒
最近気になること:ペットを飼いたい
淡路島の教えたくない景色:サンセットロードの夕焼け

みんなからみた片岡さん

・普段はスローペース、時々ハイペース。周りを見て行動してくれる。
・声が小さいけど、車に乗ったら人格が変わる。
・動物にやさしい。